前嶋先生:将来の夢

将来の夢

 

 

 

この 3 月からまた地元の海洋大学で教える機会を得て、

久ぶりにキャンパスを訪れた。

 

 

 

 

市内からは少し離れるが、

予算をたっぷり使って建てた(であろう)国立大学だけあって、

広い土地をふんだんに使った立派なキャンパスだ。

中国の大学は、

政府が権威ある大学で あると認定し予算の優先配分などの支援を行う

『国家重点大学』とそうではない大学に分 けられる。

1954 年、北京大学、清華大学など 6 校がはじめて指定され、

1978 年、88 校大 学が選定を受けた。

海洋大学もそのうちの一つだ。

正式には中国海洋大学という。

 

 

 

 

 

 

 

海洋大学というから海洋系の学部ばかりかと思えばそうでもなく、

法学部や経済学部、 文学部もある日本でいう総合大学に近い。

そこで日本語学科も存在するわけだ。

 

 

 

 

 

この大学 で、私たち日本人は外国人教師(略して『外教』)

と呼ばれて教壇に立つわけだが、

今年 度は日本語の読解、作文はもちろん

現代社会、日本文化、通訳・翻訳、貿易実務…など 8 つの科目を任され、

授業準備に追われる日々。

それでも、さすがに国家重点大学に入学し てくる秀才たちだけあって、

勉強熱心で真面目な学生が多く、それなりにやりがいもある。

ちょうど娘と同じ年頃なので、

『娘に文句を言われない授業を』と、

いつも自分にプレッ シャーをかけながら準備をする。

おかげでこのところ睡眠時間が以前に増して減っている。

ある説によると人間は 5 時間寝れば十分なそうだから、

まぁ、ちょっと足りないくらいだ が。

 

 

 

 

 

 

さて、初めて出会う学生たちを前に、

まず恒例の自己紹介をしてもらったが、

学生の変 化に驚きを隠せなかった。

以前の学生との簡単な比較を以下に記す。

Q:日本語に興味を持ったきっかけは?

A:テレビ・アニメ… → ゲーム・アニメ…

 

Q:好きなこと・趣味は?

A:バスケット・卓球・バレーボール → ネットゲーム

…インドア派なんです。
Q:将来の夢は?

A:社長になりたい → サラリーマンまたは公務員になりたい

 

 

 

 

約 10 年前、他大学で教えた時の学生の 8 割以上が

「社長になりたい」と答えた時の衝撃 も忘れられないが、

今回ほとんどの学生が「サラリーマン」と答えた、

この変化にも逆の 意味で驚いた。

当時、臆面もなく「社長になりたい」と答える彼らに、

私は「何の会社の 社長になりたいの?」と尋ねると、

ほとんどが

「なんでもいいから社長に」

「人の下で働 くのは嫌だ」と答えていた。

 

 

 

10 年後、彼らの後輩たちは、

更に恥ずかしげもなく

「イン ドア派なんです」

「趣味はネットゲーム」

「できればサラリーマンか公務員になりたい」

 

理由は「安定しているから」と答える。

この変化の速さに驚かない人はいないだろう。

 

 

 

日本でも、特に男子学生の中に、

いわゆる「インドア派」や「地元志向」など

内向き志 向が強く見られるようになったと聞くが、

ここ中国の一都市でも同じような現象が起こっ ている。

それでも一方では、機会があれば(実際にはお金があればだが)

外の世界を見る ために留学を志す者も多い。

果たして両国の行く末はいかに。

 

 

 

 

 

「少年よ、大志を抱け!」

クラーク博士の声が聞こえてきそうだ。

大学生の将来の夢の 変化に、

時代の流れを感じた出来事であった。

 

 

2018 年 4 月 3 日

 

文責:前嶋