前嶋先生:伝統と創造

 

 

 

今日は中国の伝統行事の一つ元宵節(yuanxiaojie)。

旧正月いわゆる春節の正月から

ちょうど15日目(旧暦1月15日)に当たるこの日は、

旧正月明け最初の満月の夜でもある。

人々は汤圆(tanyuan)といわれる

あん入りのお団子を食べて、家族円満を願う。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は仕事は早めに終わらせて家に帰り、

爆竹を鳴らし花火を上げ団子を食べるのが習わしだ。

青島でも夕方から随所でけたたましい爆竹の音が聞こえ出した。

青島で10年以上暮らしている私にはもう見慣れた光景だが、

初めて青島に来た年は、

春節などまるで銃撃戦の中に飛び込んだかと思うほどの衝撃だった。

 

 

 

 

 

 

さて、この爆竹と花火。

春節の風物詩だと思っていたのだが、

青島でも年々おとなしくなっていると感じる。

 

 

 

最近北京や上海では全面禁止、罰金制度までしかれているという。

「おかげでここ数年は爆竹の聞こえない静かな春節を過ごしている」と、

上海から来た友達が話してくれた。

なるほど、やめようと思えばやめられるようになったのだと時代の変化を感じた。

 

 

 

20年近く前、爆竹による相次ぐ事故をきっかけに政府が禁止制度をしいた時には、

国民から「爆竹の音がないと春節の気分が出ない」という猛反発があり、

制度撤回に追い込まれたと聞く。

 

 

 

特に最近、環境問題への関心の高まりは、目に見えて感じられることの一つだ。

排ガス規制のバスが走り、電気自動車も目に付くようになった。

12年前はマスクをしていると、

「伝染病の保菌者だと思われるからやめた方がいい」

といわれたのがまるで嘘のように、

今は日本で見るより高機能の立体マスクを付けて歩いている人も少なくない。

変われば変わるものだ。

 

 

 

 

 

一方、今青島は、6月に開催予定の国際会議に向けての準備に忙しい。

習近平国家主席ならびに各国首脳級のVIPを迎えるため、

市政府を中心に大規模な街の整備を行っている。

まるでお見合いや結婚式前にあわてて整形や化粧に励む女性のようだ。

 

 

地下鉄開通を皮切りにメイン通りは全面6車線に、

また通りに面したビルは外装のし直し、

古い看板は取り外し派手なネオンサインで飾り付け。

この会議のためになんと700億元、

日本円で1兆円以上が費やされるという。

 

 

この国の徹底ぶりと行動力は日本の比ではない。

お金は出すからきれいにしなさいという具合だ。

おかげで貧乏少女があっという間に貴婦人に化ける。

中身はともかくとして…。

 

 

 

 

 

 

人も国も伝統と創造を繰り返し変化を遂げていく。

何を残し何を変えるべきか、

その判断は大変難しく、ある時代にはそれが必要だと思えたことも、

振り返ればそうではない場合も多い。

 

 

歴史上の多くの戦争も革命も、宗教も、日進月歩の技術もまた然りであろう。

中国の春節などを見れば日本よりも伝統的な風習を残す一方、

新たな創造への勢いもまた日本を凌駕している。

 

 

 

 

この春、3年目を迎える学習塾も同様だ。

「子供たちの潜在能力を引き出したい」

として始まった小さな塾だが、

生徒とその保護者に支えられ、3年間で大きく変わってきた。

 

 

補習中心から帰国後の進学に備えた受験も視野に入れるようになってきた。

それは子供たちの成長の結果であり、それに伴う需要の変化ともいえる。

興味深いのはそれが一個人の中で起こる変化にとどまらず、

別の個人へと受け継がれていくことだ。

 

 

一方でメンバーは変わっても、

彼らの中に見られる無邪気さや子供を見守る家族の温かさなど、

変わらない部分もある。

まさに伝統と創造、伝統の創造がリアルタイムで起こっている。

それぞれの人生の営みの中での成長や変化が、

人類や社会の変化という大きなうねりと無関係ではないことを実感する。

 

 

さて2018年、私たちは何を残し何を伝え、何を変えていくべきか。

学習塾を含め日美の根底に流れるものを土台に、

時代に会った取り組みを模索していこう。

あえてそう思わずとも、目の前の生徒さんたちの成長を真剣に願えば、

やるべきことがきっと見えてくるはずだ。

 

 

 

 

 

2018年元宵節の爆竹とネオンの中で… 日本語科/学習塾担当 前嶋敦子